タロットマスターRuRu

小説・タロットマスターRuRu

Chapter3.休日と訪問者⑧

「あら、ちょうど良かった。紅茶が入ったわよ」そう言いながら、琉々はカップをソーサーに乗せている「応接スペースのソファに掛けて待ってて。すぐ行くわ」琉々はもう一杯紅茶を注ぎ、二人分を運んだ。応接スペースに戻ると、丘咲はさっきと同じ場所に座っていた。琉々が丘咲の前に紅茶を置くと、彼は軽く会釈をした。

「どう?ちょっと一人で考えて落ち着いた?」琉々は自分の紅茶をテーブルに置き、その前に腰を下ろす。丘咲はカップに手をつけながら口を開く。

「うん。琉々さんが言ったように、焦らずに過ごすことにしようと思って…今まで考えてこなかった自分の興味のあることとか…探してみようと思う」そう言って、紅茶を一口飲んだ。さっきより、表情が少し穏やかになったようだ。

「そう」ニコッと笑顔になって、琉々も紅茶に口を付けた。

「でも、一人で家にいると、なんかネガティブモードになりそうで…それが嫌だなぁ…」丘咲が独り言のように言った。

「そう。そうね…そうなっちゃうか」カチャリとカップをソーサーに戻して、琉々は少し考える。

「そうだ!」大きな目をキラリと輝かせて、琉々は丘咲の顔を見た。

「この屋敷の手伝いをしてみない?」

突然の提案に、カップに口を付けていた丘咲は小さく咳き込んだ。

「へ?」間の抜けた返事をして琉々を見る。

「ほら、ここの営業は金曜日だけでしょ?さっき見たように、車を置きに来たりしていて、ちょこちょこ来ては、掃除や庭の手入れはしてるんだけど、平日フルタイムで働きながら管理するのって結構大変なのよ。夏場って、庭の手入れが特に大変だし…」

「は、はぁ…」丘咲は頭では分かっているが、琉々の急な申し出に、気持ちがついて行っていないようだ。

「どうかしら?ちょっとの期間、自然に触れながら自分を見つめ直すの。悪くないと思わない?」丘咲の反応を完全に無視して、琉々は自分のペースで話を続ける。

「植物の世話は嫌い?あと、掃除とか」

とか。というのが気になったが丘咲は聞き返せないまま、琉々のペースで話が進む。

「いいじゃない。今まで会社勤めだったんだし。違う分野に触れてみて、何か発見があるかもしれないわ。思いもよらない才能の開花もあるかもしれないし。家にいて、一人で病んでるよりずっといいじゃない。庭仕事って、イギリスでは立派な仕事なのよ」

なかなか強引な話の流れであったが、丘咲はゆっくりと無言で頷いた。

「決まりね!早速明日からよ。私は会社に行く前にここに車を停めに来るから、その時にいろいろ教えるわね。明日の朝八時に、またここに来てちょうだい」

一方的に話をまとめて、琉々は満足そうに紅茶に口を付ける。実に優雅な所作であった。