タロットマスターRuRu

小説・タロットマスターRuRu

Chapter3.休日と訪問者⑦

「あら。これだって」

一つも動揺せずに、ニコッと笑って琉々は飛び出した一枚のカードを拾った。それをくるりとひっくり返し、絵柄が見えるようにしてから、丘咲の前に置く。さっきのカードとは絵のタイプが違い、キラキラと光を放ったような綺麗な画風だ。

【Protection 】というカードである。キラキラの光以外にも、三日月が輝いている。丘咲は英語の意味を、頭の中で日本語に変換してみようと試みたが、すぐさま琉々がカード意味を説明し始めた。

「やっぱり。とことん似たようなカードがくるわね。プロテクション、今は安心して休むといいわ。気持ちも身体もリセットして、また新たなスタートに備える時よ。大丈夫。あなたという存在は、ちゃんと守られているんだから。頑張らなくてもいいのよ。休んでいる間に、何かアイデアが出てきたり、新しい分野や、人との出会いがあるかもしれないわね」

「頑張らない…?」丘咲が不思議そうに返した。

「そう。頑張らないの」琉々が間髪入れずに答えた。

「力が入っていたら、いいアイデアは出てこないし、いい決断もできないわ。今、私がカードを引くのを見てたと思うけど、自分のペースで、自然体でいることで、自分のオリジナリティや実力が出せるものよ。人生もそうよ。何かをしよう、何かしなきゃと思って頑張っちゃうと、動きが固くなっていい仕事ができないでしょう?そんな時に、いい流れなんて来ないわ」

「……た、確かに」

「だから、今のあなたのように、大きく状況が動いている時は、なるべくリラックスして、心身共に良い状態にした方がいいの。チャンスが来た時にタイミングよく掴めるように。今は準備をする期間にするといいわ。仕事探しでジタバタするのは厳禁よ」

「で、でもゆっくりしてて、もしそのチャンスってのを逃しちゃったら?」

「それは、あなたにとってチャンスじゃなかったのよ。もしくは、もっといいチャンスがあるかもしれない」琉々は相変わらず落ち着いた様子で即答する。

「何か行動をしないと落ち着かない?現状を見るとそうなるのもわかるけど、カードでも見たように道は必ず拓けるわ。私からのアドバイスはさっきカードで出した通りよ。まぁ、どうするかはあなた次第だから、好きにしていいのよ。あなたの人生なんだから、自由にしていいの。今日の私のリーディングを無視することさえ、自由に決めていいの」

琉々の言葉を聞いて、今後は丘咲が空間を見つめたまま、じっと固まってしまった。それもそのはずだ。現状、彼は無職になってしまったのだから、どうにかしようと、気持ちは焦るばかりである。琉々は少しの間、丘咲の好きにさせようと考えた。椅子から立ち上がり部屋から出ていくが、丘咲は相変わらず空を見つめている。

カーテンを抜け、部屋を出た琉々はさっき応接スペースで丘咲が飲んだアイスコーヒーのグラスを、ついでに持っていく。こじんまりしたキッチンに行き、琉々はホーローのケトルに水を入れてお湯を沸かす。お湯が沸く間にグラスを洗い、茶葉を選ぶ。シンクの上の戸棚を開けると、茶葉の可愛いらしい缶がいっぱい並んでいる。茶葉を選ぶのも直感である。今の丘咲のイメージに合わせて、琉々は缶を一つ手に取った。お湯が沸くのを待ちながら、庭の木の音を聴く。琉々の好きなひとときであった。蝉の鳴き声も混じっているため、少し騒がしくはあったが。

シュンシュンと音がして、ケトルから湯気が出る。琉々は火を止めてケトルを持ち上げた。まずはティーポットへ注ぐ。続いてカップにも。ポットが温まるのを待ってお湯を捨てると、先程選んだ茶葉を、専用のスプーンで掬い、サラサラとポットに入れる。そこへ、まだ熱いお湯を再び注いだ。

紅茶の淹れ方も、祖母が教えてくれた。茶葉を蒸らし、頃合いを待つ。その間にカップのお湯を捨て、布巾で拭いて準備を整える。

三分ほど経ってポットの蓋を開け、スプーンでくるりと軽くかき混ぜてから、茶漉しに通してカップに注いだ。ふんわりと紅茶の薫りが広がる。琉々は少し大きく呼吸をして、その薫りを吸い込んだ。

「琉々さん?」

声の方を振り返ると、丘咲がこちらを覗き込んでいた。