タロットマスターRuRu

小説・タロットマスターRuRu

Chapter3.休日と訪問者⑥

「あら、言えたじゃない」

分かっていたかのように、サラリと琉々が言ったので、丘咲は不思議そうな表情で琉々の顔を見た。

「言ったでしょ?転機だって。この機会に、自分の気持ちに、願望に素直になってみてもいいんじゃない?人生まだまだこれからなんだから」

トントンと人差し指で真ん中のカードと指しながら、琉々が優しい口調で導く。

「ここね、現在のカード。ピッタリのが出ているわ【THE FOOL】愚者って意味だけど、カードをちゃんと見てね。

琉々が【ザ•フール】と言ったそのカードの真ん中には一人の人物が描かれており、小さな荷物を担いで空を見上げている。背景には太陽が輝き、側には一匹の犬がいる。

「このカードの数字は0でしょ?つまり、何もない、ニュートラルな状態なの。この小さな荷物を持って、自由にどこへでも行ける。新たなスタートだったり、可能性を指す意味もあるわ」

丘咲は、カードをじっと見つめている。何も言わない。沈黙の中、応接スペースの時計の音だけが聞こえた。

「うん…うん。俺、こうなりたかったんだ。でも、まだ行き先が見えてない」沈黙を破って、丘咲はポソっと呟いた。

「それは、急がなくてもいいのかもね」琉々は右のカード…現在のカードを、丘咲の方へスッと差し出した。

【PAGE OF PENTACLES】

そのカードに描かれているのは、男が星の入っている球体を両手で持っている姿であった。

「ペンタクルのページよ。これもピッタリ」

「ペンタクル?ページ?」当然、丘咲にはなんの意味か分からない。

「そうね…今のあなたの状況からすると…これから何か興味のある分野を学んでといいかもしれないわね。コツコツと積み重ねることで、いい知らせや成果が得られるかも。ほらこれ、両手で持ってるのがペンタクル。これは成果物を表しているの。簡単に言うと、お金だったり成功だったりね。何か気になってる分野はある?」急に振られて、丘咲は困惑したようで、腕組みをして深刻な顔で考え始めた。

「興味のある分野…うーん」斜め上を見ながら、呟く。あまりにも馬鹿正直な姿を見て、琉々は少し可笑しくなった。笑いを含んだ声で言う。

「いいのよ…急なことだし、見つからないなら、ゆっくり考えてみて。無理に見つける物じゃないからね。数日経って、急に思いつくこともあるわ」

「え…うん」丘咲は笑われていることが不本意なようだ。琉々は持ち直して、補足の言葉を言う。

「まあ、なんにせよ、道は拓けるわ。カードの足元を見て。穏やかな草原でしょう?ゆったり進んでいけばいいんじゃないかしら。失業保険だってあるでしょ?現状に囚われず、焦らずにね」

「う…うん」丘咲はゆっくり小さく頷いた。

「今、三枚のタロットカードでサクッと見たんだけど…もう少しアドバイスを貰ってみようかしら」

そう言いながら、たくさん積み重なった箱の中から、迷わず次の一つを選び出し、慣れた手つきで箱からカードを取り出した。さっき使っていたタロットカードより横幅があり、大きい。琉々の小さな手の中で操れるのか、丘咲はどうでもいいことが気になった。

琉々は、さっきと同じ手順でカードにノックをしてからシャッフルした。丘咲の心配は無用であった。今度も琉々は、流れるような動作でカードを操る。琉々の手の中でカードは魔法のように活き活きと動いていく。素早くシャッフルを続ける琉々の両手から、一枚のカードが飛び出した。どうやら、カード同士がぶつかり、跳ねて出てきたようだ。