タロットマスターRuRu

小説•タロットマスターRuRu

Chapter3.休日と訪問者④

屋敷に着いて、琉々が門扉を開けた。中に入ると、綺麗に整えられた芝生が緑色に輝いている。丘咲は屋敷全体をぐるりと見渡した。金曜日は暗闇で気味が悪く見えた屋敷は、薄いピンクベージュのレンガでできており、とても可愛らしい。庭は木や芝生の緑で囲まれており、都心とは思えない風景である。まるで、郊外の別荘地に来たようであった。丘咲はため息をついて建物を見上げた。

「そんなに珍しい?」琉々が扉の鍵を開けながら、ぼうっとしている丘咲に話しかける。丘咲が視線を地上に戻すと、建物の影に車がチラリと見えた。

「琉々さん、車乗るんだ…」呟きながら、建物の横に回り込んで車を見に行くと、可愛らしいミニクーパーが停まっていた。綺麗に手入れされたミニクーパーは、赤いボディが艶々に輝き、フロントには二本、黒いラインが入っている。

「何してるの?暑いんだから早く中に入って」後ろから琉々が現れた。

「あ、車が見えたから気になって…てゆーかこの車、琉々さんが運転するんだよね?」丘咲が振り返って聞く。

「そうよ。私の車なんだから、当たり前じゃない。私は普通の会社員ですからね。運転手付きなんて贅沢なことはできないわ」

「え!琉々さんて会社員なの?こんなお屋敷で占いやってるし、なんか謎の占い師家系だと思ってた!」丘咲の言葉に、琉々は小さく吹き出した。

「何?謎の占い師家系って。面白い想像ね。祖母はタロット専門だったけど、私はそうじゃないの」琉々は話しながら、入口の方へ戻って行く。暑いので、早く中に入りたいのだろう。丘咲は小走りで琉々を追いかけて屋敷の中へ入った。

中に入ると、丘咲はまた物珍しげにキョロキョロしている。琉々が灯りをつけると、応接スペースがふんわりと明るくなった。

「準備が整ってなくてごめんね。そこのソファに座って」そう言い残し、琉々は奥へと入っていく。丘咲は、一番近くにあった大きなソファに腰掛けた。少し緊張しているのか、背筋を伸ばしてかしこまっている。

「はい、どうぞ。アイスコーヒーでいい?」琉々が戻ってきてテーブルにグラスを置いた。

「あ…ありがとうございます」何故か敬語になって返事をする。手持ち無沙汰の丘咲は、すぐにグラスを手に取って、そのアイスコーヒーを飲んだ。

「少しそこでゆっくりしてて」ウィンクしながらそう言うと、琉々はカーテンのかかった部屋へ入って行った。丘咲は、少し姿勢を崩して背中をソファに預け、ゆっくりと室内を見渡した。丘咲の正面の壁には暖炉が設置されているが、今は使われていないようで、インテリアスペースとなっており、ドライフラワーや大きな絵画が飾られている。その横には、アンティークの大きな時計が置かれている。シャンデリアのぶら下がってる高い天井を見上げて目を閉じると、丘咲は大きく深呼吸した。

少し経って、琉々が薄いカーテンの間から顔を出した。

「お待たせ。こっちへどうぞ」彼はまだこの空間に慣れないのか、ぎこちない動きでそちらへ移動する。カーテンを抜けると、応接室以上の異空間であった。壁一面の本棚の中は、全て魔法の書のように見えたし、中央に設置された丸いテーブルは、可愛らしいテーブルクロスがかけられており、たくさんのタロットの箱が積み重なっている。琉々に言われて、丘咲はテーブルの手前の椅子に座った。